旧制服のアップサイクル“捨てない選択”が生み出す未来への一歩
リガクでは、2023年10月より就業時の服装を自由化し、職務上の安全確保が必要な場所以外では、社員が自由な服装で働ける環境を整えました。これに伴い、長年使用してきた事務服を廃止しました。さらに、2024年9月には、作業現場で使用する作業服を、より機能的かつ快適なデザインへと全面的にリニューアルしました。これらの変更により使用されなくなった大量の旧制服(作業服および事務服)について、リガクでは「ただ廃棄する」のではなく、新たな価値を持つアイテムへと生まれ変わらせるアップサイクルを実施しました。


衣類業界が抱える大きな社会課題
国連環境計画(UNEP)によると、世界では毎年およそ9,200万トンもの繊維製品が廃棄されています。2000年から2015年の間に衣類の生産量が倍増した一方で、衣類1着あたりの使用期間は約36%短くなっており、大量生産・大量消費・大量廃棄が常態化しています。
また、2023年に製造された繊維製品のうち、再生資源から作られた割合はわずか8%にとどまっています。コストや技術的な課題もあり、繊維製品のリサイクルは依然として進みにくい状況です。
仮にリサイクル・リユースされたものであっても、最終的には廃棄されてしまう運命にあることを考えると、「使い終えた衣類をどう扱うか」は、私たち一人ひとりが向き合うべき課題かもしれません。
リガクの旧制服も、従来どおりに廃棄してしまえば、焼却によるCO₂排出や埋め立て処分量の増加など、環境への悪影響は避けられません。こうした背景を踏まえ、「旧制服を再資源化し、美しく再生する」ことを目指し、本プロジェクトを始動しました。
プロジェクトを進めるにあたって
本プロジェクトでは、旧制服の状態に応じて最適なリサイクル手法を選定しました。
- 1. 美しく再生
- 比較的状態の良い制服や未使用品は、株式会社ワークスタジオおよびモリリン株式会社と連携し、マテリアルリサイクルの手法で繊維リサイクルボード「PANECO®」へとアップサイクルしました。
長年親しまれてきた制服に新たな価値を持たせるため、「美しく再生する」「ごみを出さずに循環させる」「環境に配慮した資源回収を行う」ことをモットーに取り組みました。
PANECO®は、サステナブルな素材で繊維廃棄ゼロ、再リサイクルも可能です。
- 具体的なアップサイクルの流れ
-
①回収
使用済みの制服を回収し、美品と汚損品に分別したうえで箱詰め作業を実施し(約2,000枚、52箱)、その後、数回に分けて回収倉庫へ出荷しました。
②解体
回収倉庫に届いた制服は、隣接する福祉施設にて、ファスナー、ホック、ボタン、タグなどのパーツをひとつひとつ丁寧に取り外す作業が行われました。
③粉砕
布だけの状態になった制服が、細かく粉砕されました。
④再生
粉砕された繊維は、成型工場にてボードやブロックとして新たな製品にアップサイクルされました。
旧制服加工によりボードを成型する様子 加工によりブロックを成型する様子 ⑤活用
完成したアップサイクル製品は、リガクでさまざまな形で活用されています。
また、「PANECO®」の活動の中核には、SDGs(持続可能な開発目標)の理念があります。
廃棄物の削減を通じた「気候変動への対策」「陸の豊かさを守る」に加え、関わるすべての人々に「ジェンダー平等」と「働きがい」を提供することを重視しています。
さらに、「PANECO®」のリサイクル工程では、一部作業を福祉施設に委託しており、売上の一部を同施設へ毎月寄付しています。これにより、障がいのある方々に働く「場所」「時間」「業務」「賃金」を提供し、就労支援にもつなげています。
- 2. エネルギーとして活用
-
マテリアルリサイクルできない汚れや破損のある制服は、株式会社エコ・マイニングに委託し、サーマルリサイクルの手法でRPF(固形燃料)に再生しました。
RPFは石炭の代替燃料として工場の熱源や発電用途に使用され、地球温暖化ガス(CO₂)の排出を約33%削減できるとされています。また、廃棄物を有効活用することで、最終的な埋め立て処分量の削減にもつながります。回収された制服2tトラック1台分 再生されたRPF
生まれ変わった制服たち
アップサイクルを経て、制服たちは壁掛け時計やコースター、紹介パネル、可動式ベンチなどへと生まれ変わりました。今後も、これらの製品を社内でさまざまな形で活用していきます。
- ■壁掛け時計
-
旧制服を原料とした、循環型でリユース・リサイクル可能な繊維リサイクルボード「PANECO®」を本体に使用しています。現在は、日本国内の各拠点に設置しています。
- ■コースター
-
大理石のような見た目とデザイン性を兼ね備えた新素材です。色味や模様もひとつひとつ異なり、多様な表情を楽しめます。
- ■紹介パネル
-
旧制服のアップサイクルに込めた想いを、一枚のパネルにまとめました。海外のお客様にも関心を持っていただけるよう、英語でも説明しています。
- ■可動式ベンチ
-
粉砕した制服から作られたブロック「Nunock」を115個使用した、キャスター付きの可動式ベンチです。本社・東京工場(東京都昭島市)と山梨工場(山梨県北杜市)に設置しています。
リガクは今後も、環境への配慮と社会的責任の両立に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。