セメント産業は電力事業や鉄鋼業に次いでCO2排出量が多い産業で、人類の活動由来のCO2排出量のうちの5~8%が、セメント生産によるものと言われています。
世界では、年間41億トン(表1:2023年度実績)のセメントが生産されていますが、セメントの製造プロセスにおいて、セメント1トンあたり約800kgのCO2が排出されます(50%は炭酸カルシウムの分解時に、残りの50%は輸送や焼成に関わる燃料によって排出)。そして日本のセメント産業も、年間2,550万トンのCO2を排出しており、『2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現』という目標達成のためには、もはや待ったなしの状況となっています。
近年、CO2排出量抑制の観点から、世界中の研究機関や民間企業でさまざまな技術開発が行われており、発生したCO2を無機炭酸塩として固定化し、セメント原料(石灰石代替)や土木資材として再資源化する要素技術(カーボンリサイクル)の実用化が進んでいます。そして今後は、通常のコンクリートの2~3倍といわれるリサイクルしたCO2吸収コンクリートのコストを削減すると共に、固定化するCO2の量を最大化することが、新たな課題とされています。
このたびリガクが開発した装置ULTGAは、東京大学大学院工学系研究科の丸山一平教授が発案、基本仕様を作成し、株式会社太平洋コンサルタントによる装置検証を経て完成しました。
固定化されたCO2の固定量を計測するには、真空乾燥機で乾燥後、万能試験機やハンマー、粗粉砕機等を使い、数日間かけて数kgのコンクリートを均一な粉末にした上で、数十mgの量で複数回測定する必要があります。通常、この一連の作業に一週間ほど掛かりますが、この装置では強度試験などを行うφ10×20cmのコンクリート供試体を、粉砕等の前処理をすることなく装置内でそのまま加熱して、発生するCO2濃度を2日程度で簡便に測定できます(図2、図3)。
本装置の測定結果は、コンクリートを練り混ぜた時の材料構成比率と、構成材料中のそれぞれのCO2量から算出した理論値とよく整合していることが分かります(図4)。

【研究助成】
本研究はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託業務 グリーンイノベーション基金事業/コンクリートにおける CO2固定量評価の標準化に関する研究開発(課題番号:JPNP21023)として実施されました。

図1:従来手法
図2:CO2固定量測定装置
図3: コンクリート試験体の測定事例
オレンジで囲まれた面積がコンクリート中のCO2量を表す
図4: コンクリート内に固定されたCO2測定値
コンクリートの試験体を16個のサンプル集団に分けて、
従来の方法で微粉化して測定した結果(図中の青丸)、
構成材料から計算で求めた理論値(図中の黒点線)と
今回の測定装置で測定した結果(図中の赤線)を示す
(いずれの測定値も、3回測定した平均値)