リチウムイオン電池(LIB)は、軽量かつ高い充放電効率を有するために、スマートフォンやノートパソコンなどの携帯用電子機器に広く用いられており、さらに大容量の電力を蓄えられることから、電気自動車や蓄電システムなどにも使用されています。

一般的に普及しているLIBに使用される電解質は有機溶媒系の液体であり、伝導率が高いメリットがある一方で、液漏れや高温化による発火、さらに氷点下での性能低下というデメリットもあります。これらの欠点を克服するために、LIBの電解質に、液体の代わりに固体を使用した”全固体電池”が、各研究機関で実用化に向けて盛んに研究されています。

固体電解質は液漏れのリスクが無いことに加えて温度変化に強いため、高い安全性を確保でき、劣化しにくく寿命が長いなどの多くの長所があります。また、固定電池ならではのメリットとして、構造や形状を自由に変えられるため、設計の自由度も高く製品への応用が容易です。現在、全固体電池は、電気自動車への採用の実現を目指して様々なメーカーによる盛んな開発が行われており、10分以内の充電で1,000 km以上の走行が可能な、革新的な電池の開発も進められています。

全固体電池の電池性能は、固体電解質のイオン導電特性と熱的・化学的安定性が結晶性に左右されるため、その結晶状態を知ることが重要です。リガクは、X線回折法をはじめとした様々な分析手法を駆使して、固体電解質の研究や開発に貢献してまいります。

リチウムイオン電池と全固体リチウムの構成材料と反応の模式図
鈴木耕太,平山雅章,菅野了次,リガクジャーナル 52(1), (2021), 1-8

各測定温度における全固体電解質Li3PS4単位格子内の原子の分布の様子
M. Yoshimoto, T. Kimura, A. Sakuda, C. Hotehama, Y. Shiramata, A. Hayashi,
K. Omote, Solid State Ionics, 401 (2023), 116361 (8pp).

Li3PS4を加熱してガラス、遷移、結晶それぞれの状態における原子の分布を見ると、ガラス状態ではLiが拡散していることから電気伝導が高く、結晶状態ではLiが凝集していることから電気伝導が低いことが示唆されます。これは電気伝導の実験結果からも同様の傾向が見られます。