環境

TCFD提言への対応

リガクグループは、持続可能な未来に向けた取り組みに力を注ぎ、私たちの材料科学への貢献が、気候変動の課題に向き合うお客様の一助になれると信じています。
私たちは、気候変動がビジネスにもたらす潜在的なリスクと機会の分析を行いました。分析の結果、リガクのビジネスが気候変動に関わるメガトレンド(電気自動車への移行、再生可能電力の利用、エネルギー効率の高いデータ処理技術など)において貢献できる可能性があることが明らかになりました。これらのリスクと機会は、リガクのマテリアリティとも一致しています。
私たちはここにTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures; 気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、気候変動がもたらすビジネス上のリスク・機会の情報を積極的に開示するとともに、特定したリスクを低減し、機会を最大限にするよう取り組んでまいります。

1.ガバナンス

当社グループでは、社会課題の解決による持続可能な社会の実現と、中長期的な企業価値向上の両立を図ることの重要性が高まる中、サステナビリティの観点を踏まえた経営を推進していくため、2022年7月に代表取締役社長が委員長を務める「ESG推進委員会(年4回および必要時開催)」(以下、「委員会」という。)を設置しました。

当委員会はサステナビリティ関連のリスクおよび機会を踏まえ、サステナビリティの基本方針や戦略・計画の策定、目標とすべき指標の設定等について審議を行うとともに、取組状況のモニタリング等を実施し、年2回以上取締役会に報告や提言を行っております。

取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク・機会の監督に対する責任と権限を有しており、当委員会で審議された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティのリスク・機会への対応方針および実行計画等についての審議・監督を行っております。

また、委員会の運営事務およびサステナビリティ施策を各社・各部門と連携し展開・推進することを目的に「ESG推進プロジェクト(以下、「プロジェクト」という。)を設置しています。当プロジェクトでは、委員会で取り上げる議案の取りまとめ、委員会からの指示に基づく必要な社内調整など、サステナビリティ施策について、実務レベルでの協議・推進を図り、委員会に報告・答申を行い、指示を受けています。

目標・計画の策定、重点取り組み課題の選定、計画に対する進捗は適宜確認し、リスクと機会および財務への影響をステークホルダーに開示してまいります。

組織体制は図の通りです。

取締役会

監督

報告・提言

ESG
推進委員会

指示

報告・答申

ESG
推進プロジェクト

展開

報告・相談

各社・各部門

2. 戦略

シナリオ分析

当社グループでは、2100年における世界の気温上昇が1.5℃上昇、4℃上昇の世界観を想定し、2030年、および2050年におけるシナリオ分析を実施しました。1.5℃シナリオは地球温暖化を抑えるための最大限の努力をした将来を想定している一方で、4℃シナリオはそういった取り組みを行わない場合の将来を想定しています。

リガク・ホールディングス株式会社、および連結子会社を対象としてシナリオ分析を進めました。

以下に示す政府機関および研究機関で開示されているシナリオなどを参照して、重要度の評価および財務影響の分析を実施しています。

  • IEA「World Energy Outlook 2023」(2023年)  
    NZE2050 / STEPS
  • IPCC「AR6」 SSP1-1.9(1.5℃シナリオ) / 
    SSP5-8.5(4℃シナリオ)

重要なリスクと機会の特定

さまざまな気候変動によるリスク、機会の中から、当社に関連する項目の洗い出しを行いました。

把握したリスク、機会について、複数の評価軸で重要度を評価し、当社事業にとって、より重要度が高いと考えられるリスク、機会を特定しました。

リスク、機会

当社への影響があると想定される項目として、リスク7項目、機会6項目を抽出しました。

特定されたリスク、機会が2030年に当社事業に及ぼす財務影響を試算し、EBITDAに対する影響の大きさをそれぞれ「大」「中」「小」の3段階で評価しました。財務影響の算定には1.5℃上昇、4℃上昇のパラメータを使用しました。ただし、適切なパラメータがない場合には2℃上昇のパラメータも一部利用しました。

種類 リスクの発生する要因 具体的内容 時間軸 2030年の財務影響
1.5℃ 4℃
移行リスク 政策
および
規制
GHG排出の価格付け進行、GHG排出量の報告義務の強化 規制や情報開示への対応に伴う原材料コスト、サプライヤーコスト、輸送コスト、エネルギーコスト、対応人件費などのコストの増加 ~2050年
(長期)
省エネ政策の強化 顧客要求や省エネ基準の厳格化に伴う開発、設備投資、輸送、調達等のコストの増加 ~2050年
(長期)
技術 既存製品/サービスの低炭素オプションへの置換 より環境性能の高い製品へのニーズ移行に伴う当社製品のシェア低下による収益減 ~2030年
(中期)
-
評判 当該セクターへの批判、ステークホルダーの不安増大 法規制等への対応遅れ・未対応による当社製品の需要減 ~2050年
(長期)
物理的リスク 急性 異常気象の重大性と頻度の上昇 当社や委託先の施設・設備の被災に伴う対応コストや逸失利益の発生 1~3年
(短期)
慢性 気象パターンの極端な変動 気象パターンの極端な変動等への対応遅れに伴う当社の労働生産性低下 ~2050年
(長期)
降雨パターンの変化、海面の上昇 降雨パターン変化や海面上昇等による物流機能への影響に伴う輸送コスト増加 ~2050年
(長期)

※自然災害による物流停滞やサプライチェーン企業の生産停滞が定量評価できなかったため、今回の評価には含めていません。しかし、これらのリスクは存在していると認識しており、定量化は今後の課題と捉えています。

種類 機会の発生する要因 具体的内容 時間軸 2030年の財務影響
1.5℃ 4℃
機会 エネルギー源 低炭素排出の
エネルギー源の利用
自社施設の更新に伴うエネルギーコストの削減 ~2050年
(長期)
製品
および
サービス
ビジネス活動を
多様化させる能力
パワーエレクトロニクス技術の革新など低炭素化のための新技術開発に貢献する製品需要の増加 ~2050年
(長期)
-
主要な炭素排出源(セメント・鉄等)における代替製造技術開発に貢献する製品需要の増加 ~2050年
(長期)
-
低炭素商品/
サービスの開発、拡大
高効率電源化、高輝度化を通じた当社製品の需要増加 ~2050年
(長期)
-
市場 新たな市場への
アクセス
顧客との対話や他社との協業等を通じメガトレンドを把握することによる新市場(製品・ソリューションや販売先の国)の収益増加 ~2050年
(長期)
-
評判 ステークホルダーの
評価変化
他社よりも積極的な情報開示による当社製品の需要増加、株価上昇、優秀な人材の獲得、資本コストの低減 ~2050年
(長期)

対応策

特定したリスクによる財務影響を最小化、機会による財務影響を最大化するため、対応策の検討を行い、5つの対応策を設定しました。

対応策は、今後事業戦略への反映を進めていきます。そして、継続的な実施と効果評価を行い、事業活動のレジリエンスを高めてまいります。

対応策 具体的内容
低炭素排出に向かう社会環境変化への当社製品を通じた貢献

低炭素排出に向かう社会環境変化に対応できる開発・販売体制の維持・強化

パワー半導体、AIデータセンタの省エネ化への貢献:SiC/SiNなど化合物半導体を用いた高効率電源、メモリ/ロジック/パッケージングの3次元化、高密度化・低消費電力化に資するR&Dとインラインメトロロジ、インスペクション装置による生産の実現

ステークホルダー(顧客・株主、社員等)との対話強化を通じた市場での貢献度把握および新たな市場ニーズの把握

自社の事業活動の低炭素化

太陽光発電や再生可能エネルギー由来電力の積極的な導入

施設・設備・車両の更新を通じた省エネルギー化

VA(価値分析)による業務効率化、原材料使用量低減

納期分散を前提としたMOQの見直し(コスト低減)

サプライチェーンの低炭素化

カスタマーおよびサプライヤーとのエンゲージメント等の強化とGHG排出量の削減協業

サプライチェーン全体の配送効率化の徹底

低炭素化に向けた社会とのコミュニケーション

規制および情報開示への対応の高効率化・高品質化

HP、広告媒体等を活用した社会への情報発信

積極的な情報開示を通じたステークホルダーの信頼獲得

サプライチェーンの強靭化

事業継続マネジメントの強化(風水害への対応基準の整理や従業員への教育、開発・生産拠点や委託先の複数化など)

取引先の事業継続マネジメントの状況把握、取り組みの要請や連携

異常気象に備えた施設・設備の再点検と改善

異常気象下でも持続可能な就労環境の整備

3.リスク管理

当社グループでは、気候変動関連のリスクおよび機会の識別、優先的に対応すべきリスクおよび機会の絞り込みについて、主に当委員会で検討を行っております。

気候変動関連のリスクおよび機会への対応状況は、当委員会でモニタリングされ、その内容は取締役会へ報告、監督されます。

気候変動関連のリスクおよび機会は下記①~⑤の活動を実行し、管理しています。また、活動は毎年見直しを行ってまいります。

  • ①気候変動関連のシナリオ分析
  • ②短期・中期・長期の気候関連のリスクおよび機会の特定
  • ③特定された重要な気候関連のリスクおよび機会に対する戦略的な取り組み方針の決定
  • ④気候関連リスクおよび機会への具体的な対応策の検討
  • ⑤気候関連リスクおよび機会の対応策実行、進捗管理

当社グループのリスク全般については、「リスク管理委員会(年2回および必要時に開催)」を設置し、経営上の各種リスクの洗い出しを行い、当社グループを監視し、必要な対策を講じ、経営の影響度に応じた機動的かつ最適な対応がとれるよう、リスク管理体制の構築に努めています。気候変動に関わる重要なリスクにつきましても、リスク管理委員会へ報告を行い、全社リスクとの連携を図っています。

ESG推進委員会
(年4回および必要時に開催)

連携

リスク管理委員会
(年2回および必要時に開催)

4.指標と目標

当社グループでは2021年度より事業活動におけるCO2排出量(以下、「 Scope1、2 」という。)の把握、2023年度よりサプライチェーンのCO2排出量(以下、「 Scope3 」という。)に取り組み始めました。

また、当社グループは2021年度のScope1、2を基準値として、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け、当社グループのScope1、2削減目標を設定しています。
「2030年度Scope1、2 50%削減(2021年度比)」

販売した製品の使用や生産のために購入した材料なども含んだScope3につきましても、今後算定結果を開示していくと共に、低炭素排出に向かう社会環境変化に対して、当社製品を通じて削減に貢献してまいります。

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